明日に繋がる今日だから

本ブログは自分の考えや思いを文章にまとめ、発信していくために使っていきます。現在はスクールカースト論についての独自の研究を投稿しています。

スクールカーストとその類義語、類似表現について

 筆者が確認した限りではスクールカーストには、ほぼ同じ意味を指すと考えられる類義語と類似表現がいくつか存在しています。スクールカーストの重要な定義を確認していく前に、それらを紹介していきます。前回の記事で、次回スクールカーストの定義について詳しく紹介すると書きましたが、この記事が非常に長くなってしまったのでまた次の記事で紹介します。

スクールカースト

学校における地位の差を表現する最もポピュラーな語。

 現代用語のオンラインデータベースの『情報・知識imidas2017』[i]と『知恵蔵』[ii]ではこの表現で登録されている。さらに、インターネット百科事典のウィキペディアアンサイクロペディアはてなキーワードニコニコ大百科ピクシブ百科事典でもこの表現で登録されている。[iii]前記した意味を表現した語の代表格と見なされていることが覗える。

 後述する他の表現との使用回数の比較においても群を抜いている。筆者が日本5大全国紙の記事を確認したところ、その全てで他の表現以上に使われていた。[iv]

 事典の扱いや新聞記事での使用回数を考えれば、前述の意味を指す最もポピュラーな表現であることは疑いようがない。

・スクール・カースト

 スクールカーストを「・」でスクールとカーストに分けた表現。スクールカーストと同義で使われる。

 オンライン国語辞典『デジタル大辞泉[v]では、これに類似した「スクール-カースト」という表記で登録されていた。

 この表現が使われる意図は不明である。筆者は、スクールカーストを外来語と捉え単語の間を作る試みだと考えている。

 使用例[vi]

①「格や身分が違う人たちのグループとは、それが下である場合だけでなく、上である場合でも、なるべく交友関係を避けようとします。いわゆるスクール・カーストです。」[vii]

②「スクール・カーストものとも総称される教室内の人間関係をテーマとした作品」[viii]  

学校カースト

 スクールカーストという語が登場する以前から存在していた学校における地位の差を表す語[ix]。意味はスクールカーストと同じと考えて問題ない。スクールカーストの語が広まった現在においても使用頻度は少ないがスクールカーストの次に使われる。

 使用例

①「「いいね」の数は、自分への支持率を映す指標である。学校カーストでの地位の差にも影響するから笑い事ではない。[x]

②「学校カーストが「キモメン」生む分断される教室の子どもたち」[xi]

・クラスカースト

 スクールカーストのスクールをクラスと言い換えて、学級内における地位の差に限定した表現。少数だが使用例はある。

 使用例

①「「クラスカースト」と呼ばれる仲間内での優劣付け」[xii]

②「そうして今やクラスカーストの底辺というやつである。」[xiii]

・教室内(スクール)カースト ※()内は「教室内」のルビ

 ほぼ鈴木翔『教室内(スクール)カースト』(光文社、2012)を指して使われる表現。

 この表現の特徴は、クラスカースト同様地位の差が学級内で生じるということを強調していることである。

 有料データベース『現代用語の基礎知識2017』[xiv]では、この表現で登録されている。『情報・知識imidas2017』の「スクールカースト[新語流行語]」[xv]の項目においても「教室内カースト、学校内序列などとも呼ばれる」と記述されている。

  使用例

「本当の男を知っている「本当の女」というカテゴリーは教室内カーストを超越する力をもっている。」[xvi] 

※筆者の知る限りではこれ以外の使用例は鈴木の本を指す意味以外は確認していない。

 なお、同じ項目で紹介された学校内序列に関してはほぼ同一表現の使用例があった。

  使用例

「異性からのモテやオヤジからのウケのよさにより「勝ち組」となる確率は高く、学校内の序列(スクールカースト ※ルビ)においても好位置を占めている。」[xvii]

・教室内ヒエラルキー

 これもクラスカースト同様に、地位の差の決定範囲を学級に絞った表現。

 これは、一応使用例がある。

  使用例

「杏が教室内ヒエラルキーの上位から下位に脱落するも」[xvi]

 なお、ヒエラルキー(独hierarchieヒエラルヒー、英hierarchyハイアラキー) という語はキリスト教特にカトリック教会の上下関係に整序されたピラミッド型組織を指す。さらにこの意味から転じて、一般に位階制や階層性指す言葉としても使われている。スクールカーストを説明する際に、この意味で使われることがある。[xviii]

カースト

 元は血統意味を持つポルトガル語(葡casta,英caste)。ヨーロッパ人のインド進出が進むにつれて、インド社会における社会集団、身分制度を指すようになった。身分制度の意味から転じて、必ずしも血統などの生得的な要素に影響されない身分、階級制度を指す意味でも使われるようになっている。この用法を用いて、学校における地位の差を表す意味で使われることがある。

 使用例

①「去年、葵が高校一年生の時にはじまった断続的ないじめは、高校二年生になってさすがに終わったが、高校二年生になって、何かもっと陰険なムードが学年じゅうにながれるようになった。カースト制度ってこんな感じなのかね、などと、当初葵は呑気にナナコと話していたものだった。(中略)一年生のとき、積極的にいじめに加わっていた、派手なグループやおしゃれなグループの生徒たちが、いわばカースト上部に位置していて、一度カースト最下位になってしまった生徒は、なかなかその地位から抜け出せず、かつてのようにおもてだっていじめられることはなくなったが、ずっと使い走りをさせられたり、無視をされたり、からかわれたりし続けていた」[xix]

②「「学校にはまるで身分制度があるみたいだ」とHさんは言う。実は他の子からも、表現は少し違うものの、同じような話を聞く機会は結構ある。自覚の程度は個人差があるものの、学校内でのグループの力関係についてこういう認識をしている子どもは多い。学校における裏のカースト制度である。」[xx]

その他の表現

 書籍・新聞・雑誌と言った活字媒体で使用例を確認できなかった表現につ いても紹介する。

・学級階層問題

 umeten氏というはてなブロガーが自身のブログで提案したスクールカーストの言い換え表現。

 特徴はクラスカースト同様地位の差の範囲を学級に限定していることである。

 umeten氏は「[試考]「学級階層問題」~意義ある異議への異議~」 [xxi]と題されたブログ記事で、スクールカーストという語の強い「キャッチ―さ」とこの語の「あまりにあいまいな印象」が「「カースト」制を「肯定」するために使われるという、全く転倒した効果を生みつつある」とスクールカーストという語の問題点を指摘。さらに、umeten氏はこの語の問題点を無視した安易な使用法が「アホな小学生・中学生が「自己肯定」のためにこの言葉を使い出す」、「その言葉の使用法を、アホな教師が承認する」と言った教育現場への悪影響の懸念を表明した。umeten氏は前述の懸念の解消とスクールカーストの性質が「社会問題」、「構造的犯罪」であることを示すために、「学級階層問題」という言い換え表現を提案したのである。

 しかし、この語はその志の高さとは裏腹にほとんど使われていない。筆者が知る限りでは、この語が活字媒体で使われた例はない。インターネット上においても、先に紹介した記事へのトラックバックを除けば、GuestPlace総合研究所というWEBサイトで「いじめ・スクールカースト・学級階層問題」とスクールカーストに並んで使用されていること[xxii]巨大掲示板サイト2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の一部のスレッドで使われたのみである[xxiii]

 なお、umeten氏が指摘した「アホな小学生・中学生が「自己肯定」のためにこの言葉を使い出す」という懸念については、umeten氏の投稿の11年後にそれに似た事例が報告されている。山陽新聞の2015年4月27日の記事[xxiv]では、「1軍[xxv]にいることが私の価値」と話す女子校生(3年)の発言が紹介されている。同記事によれば、彼女は「1軍の中でも〝エース級〟の7人でつくるLINEグループ」の中の友達と一緒に行動した様子の写真をツイッターに投稿することが「優越感をくすぐる」らしい。この記事の事例がスクールカーストと言う語の問題点によって引き起こされたかは分からないが、これはまさにumeten氏の懸念が現実化してしまった事例と言えよう。

・教室内序列

 クラスカースト同様に、地位の差の決定範囲を学級に絞った表現。筆者の知る限りで活字媒体での使用例は確認していない。

 インターネット上では、プレジデントオンラインの記事の見出しにこれが 使われている例が確認できる。[xxvi]

・学級階層

 この語もクラスカースト同様地位の差が学級内で生じることを指している。

 『デジタル大辞泉』ではこの語がスクールカーストの同意義語として書かれている。

 筆者の知る限りでは活字媒体での使用例は確認していない。

 インターネット上では、メモくりというWEBサイトの記事の見出しにこれが使われていた例が確認できる。[xxvii]

・学園ヒエラルキー

 2018年10月20日3時56分現在ピクシブ百科事典のスクールカーストの記事に同義語として紹介されていた語。

 この語は、地位の差が生じる範囲を学級内に限定していない。(2018/11/3/20:31 追記)

 もしかすると、学園ものという作品テーマ類型とヒエラルキーという語を組み合わせた語かもしれない。(2018/11/3/20:31 追記)

 筆者の知る限りで活字媒体での使用例は確認していない。

(2018/11/3/20:24 追記) 

 長谷川町蔵山崎まどか著『ハイスクールU.S.A~アメリカ学園映画のすべて~』(2006、国書刊行会)において、この語及び、ほぼ同一の表現が確認できたので使用例を記述します。

 使用例

①「学園内ヒエラルキーでは下の方に属するギークやナード、その他大勢のボンクラにとってはチアリーダーは高嶺の花なんだよね。」(同書61P)

②「学園内のヒエラルキーってのは実は表層的なのよね。」(同書72P)

③「学園ヒエラルキーは厳しいから、彼女は自分が勝ち組でも兄貴がギークだってことで学内の地位が危うくなっている。」(同書87P)

ギークはマニア、オタク、嫌な奴と訳される語

※ナードはオタク、専門バカと訳される語

 松谷創一郎著『ギャルと不思議ちゃん論 女の子たちの三十年戦争』(2012、原書房)においても類似表現が使われていました。

 使用例

「(映画『クルーレス』と映画『ミーン・ガールズ』を指して)ともに女子生徒を主人公としたこの二作は、アメリカのハイスクールにおける厳しい学内ヒエラルキーの状況を描き、同世代のティーンズから強く支持された。」(同書289P)

 インターネット上では上記の記事の他に主に特撮テレビドラマ「仮面ライダーフォーゼ」のに登場する天ノ川学園高校の生徒間の関係を指す意味で使われているようである。[xxviii]

 

 私が知る限り全てのスクールカーストとその類義語の全てを紹介したつもりです。

 もし他にここで紹介されていない使用例のある類義語があれば、記事のコメント欄で紹介してください。

 様々な表現を紹介しましたが、私は基本的にスクールカーストの語を使います。

 記事が非常に長くなってしまったので、スクールカーストの重要だと思われる定義については次回の記事で紹介します。

 それでは、また。

 

[i] (集英社、2017/6/20 17:40アクセス) 有料データベースなのでURLは省略

[ii] スクールカースト(すくーるかーすと)とは - コトバンク (知恵蔵)

https://kotobank.jp/word/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88-189538 (2018/10/20 3:06アクセス)

[iii] スクールカーストWikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88 (2018/10/20 1:48アクセス)

スクールカースト - アンサイクロペディア

http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88 (2018/10/20 1:49アクセス)

スクールカーストとは - はてなキーワード - はてなダイアリー

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%AF%A1%BC%A5%EB%A5%AB%A1%BC%A5%B9%A5%C8 (2018/10/20 1:55アクセス)

スクールカーストとは (スクールカーストとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88 (2018/10/20 1:53アクセス)

スクールカースト (すくーるかーすと)とは【ピクシブ百科事典】

https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88 (2018/10/20 1:56アクセス)

[iv] ここで言う日本五大全国紙とは、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞日経新聞産経新聞のことを指す。以下各新聞でのスクールカーストの語の使用記事数(地方版含む)

 朝日新聞 53件 (2018/10/3まで)、読売新聞 15件 (2018/10/3まで)、毎日新聞

 10件 (2018/10/4まで) 日経新聞 12件 (2018/10/8まで)、産経新聞 6件(2018/10/4まで)

一方、他の表現の使用回数は以下の通り(確認した日付はスクールカーストと同日)

スクール・カースト産経新聞 2件

学校カースト朝日新聞 1件 読売新聞 2件 日経新聞 1件

クラスカースト日経新聞 1件

教室内カースト朝日新聞 4件 読売新聞 1件 日経新聞 2件 (全ての記事で鈴木翔の新書を指す意味で使われていた)

[v] スクールカーストとは - コトバンク (デジタル大辞泉)

 https://kotobank.jp/word/school%20caste-681714 (2018/10/20 2:56)

[vi] ここで言う使用例は書籍や新聞、雑誌記事など公共図書館で確認できる活字媒体に限定している。インターネットにおける使用例は、リンク切れの恐れや改変の可能性があるため活字での使用例がない限り参照しない。

[vii] 土井隆義『キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像 (岩波ブックレット)』(2009、岩波書店、9P)

[viii] 前島賢セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史』(2010、ソフトバンク新書、189P)

[ix] 詳しくは次回の以降の記事で

[x] 読売新聞「読み解く 「いいね!」にがんじがらめ」2018年2月21日朝刊 13P

[xi]森慶一(AERA編集部)「学校カーストが「キモメン」生む分断される教室の子どもたち」雑誌『AERA』(朝日新聞出版、2007年11月19日号62P、)

[xii] 日経新聞不登校の子寄り添い続け「新聞」創刊20年」2018年5月12日、西部夕刊社会面

[xiii] 初枝れんげ(著)、パルプピロシ(イラスト)『異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件』(TOブックス、2017、プロローグ、5ページ目)

[xiv] (自由国民社、2017/6/20 17:38アクセス)  有料データベースなのでURLは省略

[xv] 『情報・知識imidas2017』では、「新語流行語」、「青少年と社会」、「カタカナ語」それぞれ3つのテーマごとに見出し語としてスクールカーストが登録されていた。

[xvi] 海老原豊 「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』(限界小説研究会(編)、南雲堂、2010、333P)

同じページに教室内ヒエラルキーの語もあった。

[xvii] 日経新聞「30年間にわたる「二項対立史」ギャルと不思議ちゃん論 松谷創一郎著」(2012年10月7日、朝刊、21P)

[xviii] 例えばはてなキーワードスクールカーストの記事(2018/10/20 1:55現在)

[xix] 角田光代対岸の彼女』(文藝春秋、2004、113~114P)

[xx] 岩宮恵子『フツーの子の思春期―心理療法の現場から』(岩波書店、2009、60P)

[xxi] 「[試考]「学級階層問題」~意義ある異議への異議~」こころ世代のテンノーゲーム

 http://d.hatena.ne.jp/umeten/20051114/p4#tb (2018/10/20 3:05アクセス)

[xxii] 「いじめ・スクールカースト・学級階層問題」GuestPlace総合研究所

 http://lab.guestplace.net/school.html (2018/10/20 3:10アクセス)

[xxiii] 「■結局、学生はルックスとグループ■」5ちゃんねる 人生相談板

 https://life8.5ch.net/test/read.cgi/jinsei/1177505977/ (2018/10/20 3:42アクセス)

 上記のスレッドのレス番号290、673、845

「学級階層問題(スクールカースト)にどう取り組む」5ちゃんねる 教育・先生板

https://school7.5ch.net/test/read.cgi/edu/1179308243/ (2018/10/20 3:48アクセス)上記のスレッドのタイトル及び、レス番号1、36、101

[xxiv] 山陽新聞「子供が危ない 深刻化するネットの闇Ⅱ 第4部つながり過剰 ③1軍のストレス」2015年4月27日 朝刊18面

[xxv] 地位の差を野球チームのように何軍かで分けたときの地位の名称。はてなキーワードスクールカーストの記事では2018年10月20日現在1・2・3軍の区分けが記述されている。

[xxvi] 鳥居りんこ「教室内序列"Fランク"の子の親の神対応5」プレジデントオンライン

 https://president.jp/articles/-/21895 (2018/10/20 3:36アクセス)

[xxvii]スクールカーストと呼ばれる学級階層について」メモくり

 http://memokuri.com/?p=130 (2018/10/20 3:33アクセス)

[xxviii] 「天ノ川学園高校 (あまのがわがくえんこうこう)とは【ピクシブ百科事典】」

https://dic.pixiv.net/a/%E5%A4%A9%E3%83%8E%E5%B7%9D%E5%AD%A6%E5%9C%92%E9%AB%98%E6%A0%A1

  (2018/10/20 4:13アクセス)

「如月弦太朗 (きさらぎげんたろう)とは【ピクシブ百科事典】」

https://dic.pixiv.net/a/%E5%A6%82%E6%9C%88%E5%BC%A6%E5%A4%AA%E6%9C%97

  (2018/10/20 4:15アクセス)

仮面ライダーフォーゼ - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BC (2018/10/20 4:19アクセス)

「学園ヒエラルキーを生き抜こう!「BULLY アニバーサリー・エディション」がiOS/Android向けに配信開始」 

https://www.gamer.ne.jp/news/201612090032/ (2018/10/20 4:21アクセス)

どうしてスクールカーストについての記事を投稿するのか

 今回の記事では、何故スクールカーストについて言及するのか、具体的に何を書くのかを説明していきたいと思います。

スクールカーストの簡単な概要

 そもそもスクールカーストとは何なのか。一言で言えば、学校において園児、児童、生徒、学生間に非制度的な地位の差が生じていることを指す言葉です。ここで言う非制度的というのは、例えば先輩後輩と言った学年の差や、普通学級か特別支援学級等の教育課程の違い等の教育制度上明らかな差を指すものではないという意味です。このスクールカーストの細かい意味については、言葉を定義づけする人によって異なり、統一的な見解は存在しません。よって、地位の差がどのような校種のどのような課程のどのような学科において、どのような特徴を持った集団もしくは個人を単位にして、何種類に、何によって生じるのかは、この言葉がどのような文脈でどのように使われているかで判断する必要があります。要するに、使う人や文脈によって細かい意味が異なるマジックワードです。上記の定義は、言葉の使われ方を鑑みて多くの定義を包括できるように、便宜上私が独自に定義したものです。世に流布しているスク―ルカーストの定義については、影響力のあるものを含めて多く存在していますが、長くなるので詳しくは次回の記事で解説しています。

 

どうしてスクールカーストについて言及するのか

 この理由については大きく分けて3つあります。

 まず、第一にこのテーマについて書き足りないという思いがあるからです。

 私は大学時代の卒業論文のテーマにスクールカーストを選んで研究しましたが、その際に50Pの予定が提出要件の関係上30Pまで削ることとなり多くの項目を削らざるを得ませんでした。そこで削った内容にはスクールカーストについての私の見解が多く含まれており、そのまま眠らせておくには惜しいと思っていました。また、卒論執筆後の考察や調査で新たに多くの知見が得られた結果、私の中に卒業論文で書いた内容を更新したいという願望が出てきました。そこで卒業論文に大幅な加筆修正を加えたものを文章の形で発表し、自分の中の気持ちを吐き出そうと考えたわけです。

 二つ目の理由は1つ目の理由と関連しています。それは、自分の中でスクールカーストというテーマについての思索を終わりにしたいという気持ちです。これは、スクールカーストについての研究を通じてこのテーマに対して否定的な思いが強くなったからです。

 私がスクールカーストについて初めて知ったのはいつであったかは覚えていません。おそらく、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のどこかの掲示板もしくはそのまとめサイトで目にしたのだと思います。そのときは、確かアメリカの学校ではアメフト部が幅を利かせているという話しと関連して語られていた(ジョックス*1という言葉も共に使われていた)と思うので「アメリカの話でしょ」と考えていました。大学の授業でスクールカーストについて聞いたときも、アメリカの話だろうと信じられませんでした。授業で紹介された和田秀樹スクールカーストの闇』(祥伝社黄金文庫、2013)も読んでみましたが、胡散臭い著者だなと思うだけで全然印象に残りませんでした。強い関心を持つようになったのは3年前、NHKBSプレミアムで放映された朝井リョウ『桐島部活やめるってよ』(2010、集英社)の劇場版(以下桐島)を見た感想を2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のなんでも実況ジュピター板(以下なんJ)の感想スレ*2で語り合っていたときでした。そのスレッドで桐島が盛んにスクールカーストと関連付けられていました。「こんなに気にしている人がいたのか」当時の私はこういう印象を持ちました。もちろん、スクールカーストを描いたとされる桐島のスレだからこそということもあるでしょう。とにかく、桐島スレでの衝撃からこの言葉に興味を持ち、3年の間スクールカーストに関連する多くの文献やネット上の投稿に触れスクールカーストについての理解を深めてきました。

 研究を続けていく中で強く感じたのは、私はスクールカーストとは無縁あるいは意識しないで学校生活を送ってきたなという気付きとこの言葉の曖昧過ぎる意味やその成立の背景にある価値観、流布の過程の問題性への呆れからくる空しさでした。

 私は小・中時代は友達が少ないどころか、周囲の子どもたちにあまり関心を持てず周囲の子供たちの関係にも無頓着でした。どのぐらい関心がなかったかというと高校時代の時点で嫌な奴らだったという印象があるぐらいで同級生の名前も顔もほとんど覚えていなかったぐらいです。高校時代は、友達が欲しかったこともあり少しは周囲の生徒に関心を持つようになり誰と誰がよくつるんでいるだとかは把握していましたが、そのつるんでいるグループ同士がどのような力関係にあったかという発想は全くありませんでした。当時の私は渡り鳥のようにグループの間を行き来していたこともあり、グループを中心にして周囲との関係を捉える考えもありませんでした。一学年が精々5~60人の小さな学校で、中学時代不登校だった生徒が多かったことも関係していたのか、嫌われる生徒はいましたが生徒間の力関係自体なかったと思います。もっとも私が気にしていなかっただけかもしれませんが。とにかく、私は児童・生徒間の地位の差など感じずに過ごしてきたわけです。ですので、卒論のテーマに選択したのはいいものの、スクールカーストが自分にも関連したこととして切実なものと捉えることはできませんでした。それでも、これについて研究することは何かしら意義があるだろうと思い調査を続けました。しかし、その思いも、詳しくは次回以降の記事で述べますが、前述の通りの意味の曖昧さや成立の背景にある「モテる」、「モテない」だといった論争とオタク蔑視、学者や評論家による出典を曖昧にした無責任で不正確な言葉の流布とそれに伴う言葉の権威付けが判明していくにつれてうんざりした気持ちに変わりました。卒業論文を完成させられたのは、ただ「卒業できないのはごめんだ」という執念が私を突き動かしたからに他なりません。

 なんとか卒業論文を完成させることはできましたが、前述の通りページを削らなくてはいけなかった上に、突貫工事で作ったことから推敲が足らなかった部分や調査不足もありその内容には不満があります。一方で、スクールカーストにうんざりしていることは変わりありません。そこで、卒論の内容を発展させた文章を完成させてスクールカーストへの思索にケリをつけようと考えたのです。この文章執筆を通じて、自分の中のスクールカーストへの思いに一区切りをつけようと思っています。

 3つ目の理由は、世間に流布されているスクールカーストについてあまり知られていない事実、この言葉を紹介した文献の問題点、私自身のスクールカーストについての考察を人々に伝えたいと思ったからです。

 あまり知られていない事実というのは、例えばスクールカーストという言葉の誕生の経緯についてです。スクールカーストはその流布の過程において、その初出や成立の背景、誰が主張していたのかが十分に記述されておらず、次回以降に紹介することになるスクールカーストを扱った文献からはそれらの情報は分かりません。他にも、スクールカーストという言葉が一般化するまでの歴史やこの言葉の登場以前にもあった類似言説の存在、この言葉に言及してきた人々についても文献だけでは分かりません。これらの情報を知るためには、文献の記述を参考にするだけでなくスクールカーストという言葉が生まれたネット上の投稿を発掘し分析するしかありません。そこで、私は研究の過程でその発掘と分析を行い、いくつかの事実を見出しました。私がまとめた事実はスクールカーストという言葉の性質を考える上で無視できない情報ですから、この情報は自分だけが独占すべきではなくこの言葉に関心がある人に伝えるべきだと思いました。

 次にスクールカーストを紹介した文献の問題点についてです。ここで言う問題点とは具体的には、この言葉についての調査不足に伴う誤解、この言葉についての知識の隠蔽、既存のスクールカーストの定義や見解についての無批判な言及、根拠がない、もしくは信頼性の低い調査に基づくスクールカーストの実態への言及、文章からにじみ出る著者の偏見や誤謬、根拠がなく、無責任なスクールカーストへの対応策の提示が挙げられます。「信頼のおけない文献ならば無視すればいいじゃないか」という意見もあるでしょうが、研究の作法で言えば既存の文献への言及は避けて通れませんし、8万部以上の発行部数*3を誇る鈴木翔『教室内カースト』(2012、光文社新書)と言った一定の支持を受けている文献も存在しているので、既存の文献を信用している人々への反論もかねて前述の問題点を指摘すべきだと考えたのです。なによりも、スクールカーストについて研究していて既存の文献の記述の信頼性のなさにイライラさせられたので、前述の問題点を指摘し既存の文献がいかに信頼できないかを世に知らしめてやりたいと思ったからです。

 私自身のスクールカーストについての考察とは、文字通りこの研究の過程で得られたスクールカーストに関する私自身の見解のことです。何故自身の見解を述べるのかと言えば、既存の文献を批判する以上は自身の見解を述べるべきですし、せっかく研究したのだからぜひとも内容をまとめて公表したいという思いがあるからです。何よりも、この作業を行うことによって私の中でのスクールカーストへの思索に区切りがつくと思っているからです。

スクールカーストの何について語るのか

今のところは下記の事項についての記述を予定しております。

スクールカースト定義の紹介と分類

・登場以前から現代までのスクールカースト言及の歴史

スクールカーストの影響力のある定義の批判的考察と提唱者の紹介

スクールカーストについて言及した文献の批判的考察と著者の紹介

スクールカーストという言葉をどのように捉えるべきか

スクールカーストが示す非制度的な地位の差についての考察

スクールカーストという言葉が広がった背景

・その他関連事項について

スクールカースト総括

必要に応じてこの他の事項についての記事を投稿したいと考えています。

最終的な目標

 スクールカーストについての研究成果を役立てるために、ウィキペディアはてなキーワードアンサイクロペディアピクシブ百科事典、ニコニコ大百科の記事を改定します。具体的には、言葉の初出、歴史、提唱者、使われ方、定義について改訂を加えたいと考えています。特にウィキペディアはてなキーワードはこの言葉を始めて知った人が参考にすると考えられるサイトなのでより詳しく記述します。

 ネット百科事典の編集を通じてスクールカーストについての事実を広めたいと考えています。

 

次の記事では、スクールカーストについての様々な定義を紹介、比較していきます。

それでは、また。

*1:スポーツ馬鹿を指す英語のスラング

ブルックス・ブラウン『コロンバイン・ハイスクール・ダイアリー』(2004、太田出版)では上記の意味で訳されていた

*2:具体的には下記のスレッド

BSプレミアム桐島、部活やめるってよ [転載禁止]©2ch.net

https://orpheus.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1448884807/

BSプレミアム桐島、部活やめるってよ 2 [転載禁止]©2ch.net

https://orpheus.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1448888394/

【反省会】桐島、部活やめるってよ [転載禁止]©2ch.net

https://orpheus.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1448890897/

全て(2018/10/01/17:36)閲覧

*3: 朝日新聞2013年4月24日付け朝刊 、3ページ下部の広告より。下記のページに画像あり

「★「教室内(スクール)カースト」という言葉|ジャーナリスト 石川秀樹」

https://ameblo.jp/hide7mail/entry-11517488495.html (2017/12/13 14:49) 

初めまして

 こんにちは、我信風進(gashinhuuzi,ガシンフウジ)と申します。

 本ブログは私の個人的な意見、趣味、研究を発表するために開設させていただきました。

 具体的には、はてなブログ界隈発祥の言説である「スクールカースト」についての独自の研究、調査に基づく事実と考察を述べていこうと考えています。その内容については次の記事にて詳しく解説します。

 「スクールカースト」についての投稿が一段落した後は、気の向くままに本や映画、アニメの感想や気になった事柄への意見などを書いていこうかなと今は思っています。

 ブログの投稿について感想、ご意見等がございましたらどしどしコメントして頂けると嬉しいです。

 それでは皆さん、どうかよろしくお願いいたします。